EU、新たな対ロシア制裁措置で合意に至らず
欧州連合(EU)は、ウクライナ侵攻以降で21回目となる対ロシ制裁パッケージについて、加盟国間で合意形成に至っていない。EUの27カ国全員の賛成が必要なため、交渉は長期化しており、7月15日の自己設定期限を過ぎても結論が出ていない。
ハンガリーの元首相ヴィクトル・オルバンが5月に退任することで、EU内での対ロシア制裁強化への期待が高まっていた。16年間にわたり権力を握ったオルバンは、ロシアに最も友好的なEUの指導者と見なされており、ブダペストが制裁の効果を弱めてきたとの批判が絶えなかった。
しかし、欧州委員会が6月初旬に加盟国に送った第21回目の制裁パッケージ案は、主要な措置の多くが削減または削除されており、EU外交官たちはこれを「エメンタールチーズ」と表現した。スイス産の有名なチーズであるエメンタールは、多くの穴が特徴的であり、この比喩は制裁の穴だらけを示唆している。
主要な提案と現在の状況
EUの外交官らがRFE/RLに語ったところによると、当初の提案は野心的な内容だったが、現在では多くの要素が削減されている。以下に主要な提案とその現在の状況をまとめる。
| 制裁措置 | 当初の提案 | 現在の状況 |
|---|---|---|
| ロシア産魚類の輸入禁止 | 特にタラ、ホッケ、タラ科の輸入禁止 | 完全に撤回 |
| 元ロシア兵士の入国禁止 | シェンゲン圏への自動入国禁止 | 決定なし |
| ウラル原油の価格上限 | 44.10ドル/バレルを6ヶ月間維持 | 3ヶ月間に短縮 |
| 金融制裁 | 主要ロシア銀行への制裁強化 | 維持の見込み |
| 個人の資産凍結 | 250人以上のロシア人・企業 | 一部削減 |
各国の反対と問題点
ロシア産魚類の輸入禁止案は、ドイツ、ポーランド、ポルトガルなどの加盟国が国内食品加工に使用されるロシア産魚類への免除を要求したため、完全に撤回された。特に、これらの国々は、魚類の輸入禁止が国内食品産業に悪影響を及ぼすと懸念していた。
元ロシア兵士の入国禁止案については、エストニアが強く推進した。エストニアは、ロシア国民の観光ビザが前年比10%増加したと報告しており、安全保障上の懸念がある。しかし、地中海沿岸諸国は観光業、主要な収入源を損なうことを望まず、具体的な決定には至っていない。
ギリシャは、2027年1月1日以降のロシア産LNGの輸送を禁止する2025年10月の合議について、無制限の免除を要求した。ギリシャは、EU企業がロシア産LNGの輸送を禁止されると、単にEU外の企業や港に仕事が移るだけだと主張している。これにより、ロシアは依然として燃料を輸出し続けることになる。
オーストリアは、国内のライフェイゼン銀行に対する補償を要求し、制裁パッケージの承認を遅らせている。オーストリアは、銀行がロシアでの活動で25億ユーロを没収されたと主張している。これは、多くのEU加盟国政府が企業のロシア撤退を奨励中に、ライフェイゼン銀行が自らの判断でロシアに留まったことに対する他の加盟国の不満を引き起こしている。
今後の見通し
現在、EUは7月22日に再び会合を開き、制裁パッケージについて話し合う予定である。パッケージには、ロシアの銀行に対する制裁や、ロシアの「ダークフリート」とみなされる船舶への制裁が含まれる見込みだ。これらの船舶は、EUの石油禁輸を回避するために使用されているとされている。
また、250人以上のロシア人や企業が資産凍結やビザ発給禁止の対象となる予定だ。その中には、元ロシア副首相で現在は国際チェス連盟の長であるアルカディ・ドルコビッチ、ロシアのスポーツ大臣ミハイル・デギタレフなどが含まれている。
しかし、このリストも緩和された。ブルガリアが当初の提案に含まれていた3名の名前(キリル総主教、イスカンダル・マフムドフ氏など)の即時除外を強く要求し、これを受け入れざるを得なかった。
EU内の分断が続く
これらの動向は、ウクライナ侵攻以降、EU内での対ロシア制裁について合意形成が依然として困難であることを示している。オルバンの退任が状況を改善するとの期待があったものの、加盟国間の利害対立は依然として根強い。
EUの外交官らは、制裁パッケージが「穴だらけ」になることを懸念している。一部の加盟国が自国の利益のために制裁を弱めようとする動きは、EUの団結と効果性を損なう可能性がある。
7月22日の会合で合意に至るかどうかは不透明だが、EUはロシアに対する圧力を維持する一方で、加盟国間の利害対立を調整するという困難な課題に直面している。